こんにちは、笠井です。
私たち人間は、ネガティブな感情を感じることが、とても苦手です。
悲しみ、怒り、怖れ、不安、後悔、恥、嫉妬、劣等感、恨み、寂しさ。色々ありますね。
カウンセリングの現場でも、「この苦しい気持ちをなんとかしたいんです」というご相談をたくさん受けます。
誰もが、こういう感情を味わうことにうんざりしていますし、「こんなふうに落ち込むのは建設的じゃない」と思っています。
でも、本当にそうでしょうか。
実は、感情は、あなたの味方なんです。
ネガティブな感情は、ただあなたを不快にさせるためだけにあるわけではありません。
あなたが、本当に生きたい人生の道から逸れてしまっていることを、教えてくれているのです。
いわば、人生の羅針盤。
でも、多くの人がそれに気づかず、感情から目を背けてしまいます。
ネガティブな感情を無視し続けると、あなたは、人生の迷子になってしまいます。
◆「あぁ、またか」の繰り返し
私たちは、いつも感情に振り回されています。
怒って、泣いて。で、笑って。
よく、平さんが言いますね。
「会社を辞めたいって言うとき、会社がイヤなんじゃない。会社にいるときに感じる、あの感情がイヤなんだ」
だから私たちは、なんとかしてこの感情から距離を取ろうとします。退職や別れを選んで物理的に離れたり。相手を攻撃したり。我慢して心を閉ざしたり。
けれど、場所や人を変えても、結局また似たような状況がやってきて、何度も〝同じ気持ち〟を味わうことになります。「あぁ、またか」と。
ではここで、いちばんやっかいなのは何だと思いますか。
もし、あなたが本当にしたいこと、本当に欲しいものが、なかなか手に入らないのだとしたら。
それはたいてい、「その避けたい感情の向こう側」に隠れているのです。
だから、感情から逃げようとすればするほど、私たちは、本当に欲しいものからも遠ざかってしまう。
◆欲しいものに、まっすぐ進めない
ここで、ひとつ想像をしてみてください。
自分自身が、「磁石」になったと考えてみるのです。
100メートル先には、あなたが本当に手に入れたい大きなゴールがあります。
仕事の成功かもしれないし、心温まるパートナーシップかもしれません。
当然、あなたはそこへ向かって、まっすぐ歩こうとします。
でも、この直線上の道には、あなたにネガティブな感情を感じさせる磁石が、いくつも落ちているのです。
目的地に向かって歩きたいのに、それに近づくと、目に見えない磁力でフッと進路が曲げられたり、時にはバチンと弾き飛ばされたりしてしまう。
そして、飛ばされた先にある気休めの快楽にピタッとくっついて、しばらく動けなくなったりもします。
「これではいけない」と迂回して進もうとしても、その別のルートにもまた磁石が落ちていて、押し返されてしまう。
私たち、まっすぐ歩くつもりはあるのだけど、あっちへフラフラ、こっちへフラフラ。実際は、ほとんどまっすぐ歩けていないんです。
すると多くの人は、「我慢しなきゃ」「気合いだ」と踏ん張ります。
でも、人生の道の上にこういう磁石がたくさん転がっていると、そうやって避けては弾かれを繰り返しているうちに、気づけばまた目的地を見失ってしまう。
で、こんな状態で疲れ果ててしまい、多くの方がカウンセリングを利用されます。
ちなみに、この道に落ちている磁石。
面白いことに、みんながあなたと同じように、ここで反発するわけではないのです。
◆十人十色の磁石
たとえば、職場にいつも不機嫌で、威圧的な人がいたとします。
「あ、今日も機嫌わるいな。あの人も大変なんだろうな〜」と平気な顔でスルーできる同僚もいれば、その人が視界に入っただけで胃がキュッとなってしまう人もいます。
その人は、廊下ですれ違いそうになると、用もないのにスマホの画面を覗き込んでやり過ごしてしまう。
同じ人を前にしているのに、です。
相手そのものに、反発させる力があるわけではありません。すべては、私たちの「感じ方」の問題なのです。
そもそも、何に対してネガティブな感情が湧くかは、育ってきた環境や過去の傷つきによって、十人十色になります。
誰かにとっては、〝お母さん〟が不快の磁石になっているかもしれません。誰かにとっては、〝男性〟全般かもしれません。〝誰かに甘えること〟や、〝誰かに何かをしてあげること〟かもしれません。
だから、私が思うところは、まっすぐ進めないのは、あなたも誰も悪くないのかもしれない、ということです。
それなのに、人間は前に進みたいのに進めないとき、どうしても自分を責めるか、他人を責めることしかできない。
本当は、感情を避けて、反応してしまっているだけなのに。
感情を感じていくことが解決だとしても、それをしたくない人が多い。
だから、自己啓発が流行る。問題を、頭でなんとかしようとする。
それぐらい、私たちは不快な感情と向き合いたくないのです。
でも、向き合う場所が違うから、解決しているつもりが解決しておらず、何度でもそれが続いてしまいます。
何度も試して、疲れている人がここに来てくれているのだとしたら。
ただ、見ている場所が、少し違っただけです。
◆避けた感情の向こう側
カウンセリングで扱うのは、この「感情」です。
そこはかとなく不快だと思っている感情には、ひとは近づかないですよね。
でも、人間の心というのは不思議なもので、嫌な感情だけを都合よく切り捨てることはできません。
ネガティブな感情を避けようとすると、実はそこに付随している「たくさんの恩恵」からも、同時に遠ざかってしまうのです。
たとえば、ヒステリックで甘えてばかりなお母さんがいたとします。娘として我慢ならず、「絶対、お母さんのようにはならない」と思ったとします。
すると、お母さんの甘えるような一面までも許せなくなり、大人になってから、一番甘えたいはずの人の前でこそ、可愛くない態度をとってしまったりします。
以前、私がヴィパッサナー瞑想の合宿に参加したとき、人間は「執着と嫌悪」によって問題が起こる、と教わりました。心理学をやっていても、まさにそうだなと思います。
で、この感情に、ひとりで近づいていくのは、イヤでしょう。
ここで、カウンセリングが役に立つのです。
カウンセリングは、安全に感情を感じてもらう場所です。
ひとりで感じる感情と、誰かと一緒に感じる感情は、同じであって、同じではないのです。
誰かが隣にいる場所で、避けてきた感情にそっと触れたとき。
膝の上でハンカチを固く握りしめていた手が、少しずつゆるんでいくように、磁石の反発はスッと消えていきます。
すると、これまでどうしてもたどり着けなかった「欲しかったもの」に、手が届くようになったりします。
ふだんの私たちは、感じるより先に、なんとかしようとします。だから、まず、感じるところから始めるのです。
感情は、本当に生きたい道を教えてくれる、大切な羅針盤です。
そして、あなたが避けてきたその感情の奥にこそ、ずっと探していたものが眠っています。
笠井 大雅

