彼があなたを手放せなくなる〜しごと男×合わせる女〜(中編)

前編では、男性の心にある「ヒーローでありたい」という願いについてお話ししました。

でも、ここでひとつの疑問が浮かびませんか。
「私は彼をヒーローとして見ているのに、どうして彼は距離を取ろうとするの?」

人の心の原理原則に、「愛し合える幸せ、愛し合えない苦しみ」というものがあります。
そして、それは彼も同じで、愛し合いたいはずなんですが。

そのことを心の片隅に置いて、彼の本当の胸の内を、一緒に覗いてみましょう。

あなたに隠しておきたい、彼の本当の心

もし、彼が仕事を理由にして、あなたがこれ以上彼に近づけないのであれば──
それは、彼の心が、「自分はヒーローになれないかもしれない」という不安を表現しているのだ、と捉えてみてください。

こうお伝えすると、中には、「あの人は仕事もできるし、すごく自信満々に見えるし、自分のことをすごいと思っていますよ」と感じる方もいますよね。
確かに、仕事で成果を出し続けてきた男性は、自信があるかもしれません。

でも、ここで言っているのは「社会的な立場や収入」に対する自信ではないのです。
これは、「男女関係において、一人の女性を愛し、幸せにする男としての自信」の話なのです。

もしかしたら、この人は、過去のパートナーたちとうまく関係を築くことができなかったのかもしれません。
相手を傷つけてしまったり、 自分が深く傷ついてしまったり。そういう挫折の一つひとつが、「パートナーを幸せにできない」という、 深い無力感に繋がっていることは本当によくあるのです。

彼の恋愛観は、あなたとの恋愛だけで作られたものではないのです。
古くは母親との関係から、過去のパートナーたちを通して、バトンで繋いできたものなのです。

──彼はずっと苦しんできたのかもしれませんね。
そして、どんな理由であれ、そんな苦しんできた自分を〝自業自得〟として、いつの間にか断罪してきたのです。これはあなたに隠しておきたい、彼の一面なのです。

彼は怖いのです。

「また、愛し合えなかったらどうしよう」

もしそうだとしたら、「仕事人間」という仮面は、彼の不安を隠してくれるのにはとても役に立ちそうですよね。

彼のトラウマを見てあげる

今日、彼の心の傷を見てあげてほしいのです。
ここには、男女のすれ違いの多くが存在しています。

彼が〝自分を素晴らしい〟と思えていない度合いだけ、「あなたに〝何か〟を与えないといけない」と気負っているということです。

その〝何か〟は、出会った当初の彼の態度にあらわれていたはずです。
とても優しかったり、 会うために仕事を抜けてくれたり、 困っているあなたを真っ先に助けてくれたり。

「男は、釣った魚に餌をやらない」と揶揄されることがありますが、彼は、本当は、あなたに与え続けたいと思っているのです。

ただ、ある瞬間、それがどうしてもできなくなる。

彼の心には、〝愛し合えなかった〟〝傷つけてしまった〟──そんな過去の許せない自分が、何層にも積み重なっています。
そしてこれは無意識なのですが、あなたを通して〝過去の償い〟をしようとしているので、「今度こそ……」と感じているのです。

ところが、この積み重なった層は、あなたとの〝ちょっとしたやりとり〟の中で、ふいに刺激されてしまいます。

たとえば、
もう少し連絡してほしいと言われると、責められているように感じたり。
喜ばせようとしたのに、うまく伝わらず落ち込んだり。
地雷を踏まれて、衝動的に言葉で傷つけてしまったり。

でもこれは、あなたへの愛がなくなった証拠ではありません。

想像してみてほしいのです。
これらすべては、彼が過去のパートナーと乗り越えられなかったシーン(トラウマ)なのです。

彼だって、本当はここを越えて、二人の関係を深めていきたいのです。
しかし、過去の心の痛みが強すぎると、心が耐えきれず癇癪が起こり、彼はまた〝あの時〟と同じように失敗してしまう。

そして、自分をひどく責めたり、あなたに怒りをぶつけたり、急に距離を取ったりするのです。
「やっぱり、僕には無理だな……」

ここまで読まれたあなたなら、もう気づいているはずです。
「私もまったく同じところで、つまずいているんだ」と。

◆あなたの〝彼に合わせる愛〟を振り返る

あなたは自分の気持ちを表現するよりも、彼の都合に合わせてきました。
心のどこかで、「いつか彼が気持ちに気づいてくれるはず」と願いながら。

今度は、彼の立場からこの状況を見てみましょう。

彼はあなたと過ごすうちに、
「僕は彼女のヒーローにはなれないな」と、その感情から離れるように、仕事の世界へと没頭していったのです。

仕事には明確な大義名分がありますから、彼にとっては安全地帯です。
仕事に没頭している間だけは、「男としての劣等感」を感じずにすむのです。

だからこそ、彼は気づかないうちに、ワーカホリックの渦へと引き込まれていきます。

あなたが彼の負担にならないようにと連絡を控えていると、彼はそれを「これが僕たちのちょうどいい関係なんだ」と解釈します。


「彼に合わせる」という、あなたの愛し方は尊いものですが、本当にあなたを守ってくれていたのでしょうか。
もっと、先の世界に進んでみたくはないですか。

次回、後編へ続きます

中編では、主に「彼がなぜ、あなたと距離を取ってしまうのか」ということについてお話ししてきました。

彼のそっけない態度や冷たい言動に触れていると、どうしても「私はもう愛されていないのかもしれない」と感じてしまいますよね。
ですが、ひとつ覚えておいてほしい大切なことがあります。

もし、彼が本当にあなたを嫌になり、離れたいのであれば、関係そのものはすでに終わっているはずです。
そうしないのは、彼がいまもなお、あなたを選び続けているからなのです。

愛がないように見える彼の行動を、「あなたへの愛がなくなった証拠」として扱わないでください。
ただ、彼の心の傷(トラウマ)があまりにも深いからこそ、起きてしまう現象なのです。

どれだけすれ違いがあったとしても、彼がいまもあなたとのパートナーシップを手放していないのであれば、そこには彼なりの理由と葛藤が存在しているはずです。

そしてこれは、彼だけに言えることではありません。
あなた自身もまた、彼と同じように、彼と無意識に距離を取っている可能性があることに気づいてください。

後編では、この無意識のすれ違いを越えて、
「どうすれば、二人の距離をもう一度、縮めていくことができるのか」
というプロセスをお伝えしていきます。

どうぞ、お楽しみに。

笠井 大雅

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