親から渡された「過干渉」というバトン〜あなたの人生を取り戻す旅〜(後編)

こんにちは、笠井大雅です。

子どもだったあなたにとって、親に過干渉に合わせることは、親を助けること。
前編では、そんなお話をしました。

親の不安や劣等感を和らげようとしたのかもしれません。
親の正しさを、必死に引き受けてあげたのかもしれません。

それは間違いなく、あなたの愛でした。
だけど、それは苦しかった。

「私と同じような苦しい思いだけは、この子にさせたくない」
あなたの心のどこかに、そんな願いがあるのではないでしょうか。

なのに、気づけば口を出してしまう。思い通りにさせようとしてしまう。
そして、子どもの曇った顔を見ては、激しい自己嫌悪にさいなまれる──

今回は、この無意識の連鎖が起きる心理的な仕組みを紐解き、そのバトンを自分の代で手放すための道筋をお伝えしていきたいと思います。

では、なぜ私たちは、あんなに苦しかったはずの過干渉を、我が子に繰り返してしまうのでしょうか。
そこには、大きく分けて2つの理由があります。

◆過干渉を繰り返してしまう2つの理由

1. 今もまだ、「本当のあなた」は生きたがっている

子どもの頃、親の「正しさ」に合わせ続けるうちに、あなたは「自分が感じたことや望んだことは、そのままでは愛されない」という感覚を、心の奥深くに刻み込んでしまったのではないでしょうか。

そうして、自分の本音を押し込め、親の望む「いい子」や「ちゃんとした自分」を、必死に生きてきたのです。

それはまさに、「自分が不在の人生」を生きていくようなもの。

もちろん、あなたがそうしたかったわけではないはずです。
幼かったあなたが、あの家族の中で生き抜くためには、そうやって心の境界線を明け渡すしかなかったのです。

だけど──いくら心の奥深くに閉じ込めたとしても、「本当のあなた」が消えてなくなることはありません。

あの頃の純粋な気持ちや願いは、今も心の奥に、そっくりそのままの形で息づいています。
「本当のあなた」は、大人になった今も、ずっと外の世界で生きたがっているのです。

たとえ今──
なにが好きかわからなくても。
なにを選んでいいのかわからなくても。
「本当の私」がどこにいるのかすら、わからなかったとしても。

だけど、心の境界線が曖昧なままだからこそ、「こうあるべき」「こうしないと危ない」という親や周りの感情がなだれ込んできて、「本当のあなた」はずっと外に出てこられないままなのかもしれません。

ずっと、こんな大きな葛藤の中にいたのではないでしょうか。

もしそうであれば、目の前の我が子が自由に感情を出し、ありのままに生きようとする姿を見たとき、激しく心が揺さぶられてしまうのは当然かもしれません。

だって、あなたはこんなに我慢してきたのだから。
たとえ愛する我が子であっても、その姿を一番近くで見続けることは、心にとってあまりにも苦しいことなのです。

封じ込めてきた自分の痛みと願いが疼き出し、心のバランスを保てなくなってしまう。
そのざわつきに耐えきれず、気づけば口を出し、我が子をコントロールしようとしてしまうのです。

2. 親をコピーしてしまう私たち

私たちは、思っているよりはるかに、親のすべてをコピーして生きています。

家族の常識や言葉遣い、怒り方や笑い方から、ふとした仕草、ため息、慣れ親しんだ味まで──
私たちが「自分らしさ」だと思っているものの多くは、幼い頃に親を見て、全身で吸収してきたものばかりです。

そしてそれは、目に見える生活習慣だけではありません。

親が幼いあなたに向けていた「過剰な心配やダメだし」や「見張るような視線」、そしてその不器用な「愛し方」までも、私たちは驚くほど忠実にコピーしてしまうのです。

こうして心の中に「親とよく似た自分」ができあがります。
そして大人になった今も、親に代わって、かつて押し殺した「本当の自分」を見張り、責め続けてしまうのです。

そして、私たちはその「過干渉や過剰な心配」こそを、無意識のうちに人を愛し、守るための唯一の方法として学んでしまったということです。

私たちは、愛されたように、人を愛するのですから。

だからこそ、目の前の我が子を心から愛そうとすればするほど、かつて親が自分にしてくれたのと同じやり方を、まるで正しい愛の表現であるかのように忠実に再現してしまうのです。

「あなたのためを思って」と口を出してしまうその奥には、かつて親から受け取り、そして今、我が子へと手渡そうとしている不器用で、痛烈なほどの愛があるのではないでしょうか。

◆一世代ずれてしまう「幸せの舵取り」

過干渉の悩みを抱えていると、「どこまで口を出すのが正解なのか」「どんな言葉をかけるべきか」という関わり方の技術やテクニックを探してしまいがちです。

けれど、本質はそこにはありません。

本当に大切なのは、「あなたが、自分の人生の舵を自分で握れているかどうか」です。

自分の人生の舵を手放してしまっていると、その手は無意識のうちに、子どもの人生の舵を握ってしまいます。
親はあなたの人生の舵を握り、あなたも我が子の人生の舵を握る。

この連鎖の正体は、何だと思いますか?

それは──
「自分の幸せは親に明け渡し、子どもの幸せは自分が背負い込む」という、
一世代ずれてしまった生き方です。

幸せの舵取りが、一世代ずつずれて受け継がれていく。
もしかすると、あなたは今、自分の人生を「一世代遅れ」で生きているのかもしれません。

そして、もうひとつ。

あなたが、自分の人生を自分の足で歩むという信頼を失っていると──
子どももまた、自分の力で乗り越えられる存在だと信じられなくなってしまうのです。

子どもが弱く、危なっかしく見えてしまい、つい手を入れたくなる。

これは、子どもへの不信ではありません。
自分自身への不信が、子どもに映し出されているだけなのです。

あなたが今苦しんでいるのは、あなたが悪いからでも、親失格だからでもありません。
これから、少しずつ変えていくことができます。

◆ゴールは「置き去りにしてきた自分」を取り戻すこと

この連鎖を終わらせる最初の一歩は、子どもを変えようとすることではありません。

あなた自身の中に置き去りにしてきた「小さな自分」を迎えに行くことです。

かつて、親の顔色を窺い、自分の本音を押し込めて生きてきたあなた。
親の不安を和らげるために、親のセラピストとして懸命に寄り添った、健気な幼いあなたです。

大人になったあなたが、その小さな自分を見つけてあげて、優しく声をかけてあげてください。
「もう、親の顔色を気にしなくていいんだよ」
「あなたが本当に好きなものを選んでいいんだよ」と。

ゆっくり、ゆっくりと──

あなたが感じたことや望んだことをもう一度思い出し、自分の人生の舵を自分の手に取り戻したとき、子どもの舵を握りしめていた手の力が、自然とふっと抜けていきます。

「この子には、この子の人生を切り拓く力がある」と、本当の意味で信頼できるようになるのです。

◇先祖代々のバトンを、ここで置く

あなたが今感じている葛藤は、あなたが我が子を深く愛し、そして「この連鎖を自分の代で終わらせたい」と本気で願っている証です。

あなたが受け継いできたのは、親の干渉や否定だけではありません。
不器用で、もどかしくて、それでもあなたを思っていた親の愛の葛藤をも、一緒に引き継いできたのではないでしょうか。

過干渉の問題は、あなた一人、あるいは親一人の問題ではなく、世代を超えて受け継がれてきた目に見えない「バトン」です。

想像してみてください。

親もまた、葛藤の中、生きてきたのかもしれません。
親を責める必要も、自分を責める必要もなかったのです。

「これまで家族を守るために受け継がれてきた愛の形だったんだね。でも、私は私の人生を生きるね」

そう心の中で伝え、そのバトンに感謝を込めて、自分の代でそっと手放してみませんか?

あなたが自分の人生を自由に楽しみ始めたとき、子どももまた、その背中を見て、自分の人生を誇らしく歩み始めます。

あなた自身が、そしてその子が、それぞれの人生の舵を笑顔で切っていけますように。


笠井 大雅

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